手引きGuide 01

技を残すのは、人。AIは、辿るための道具

結論

技術承継でAIにできるのは、人が残した知に辿り着きやすくすることだけです。何を残すか、どれが正しいかを決めるのは、いまも現場の人です。順番が逆になると、道具に振り回されます。

「AIに置き換えられる」という不安の正体

現場でAIの話をすると、静かな警戒が返ってくることがあります。長年かけて身につけた勘どころが、機械に取って代わられるのではないか。その感覚はもっともです。ただ、実際に失われて困るのは、AIに置き換えられる知ではなく、置き換えられないのに残されていない知の方です。

確認の順番、例外時の見極め、危ないと感じたときの一手。こうした判断は、本人にとって当たり前すぎて、言葉にされないまま頭の中にあります。人が抜ければ、そのまま消えます。AIはそれを勝手に思い出してはくれません。

道具としてのAIが得意なこと

一方で、いったん言葉や映像や記録の形になった知に対して、AIは力を発揮します。膨大な日報や手順書の中から、いま必要な一件を探し出す。似た事例を並べる。根拠の在り処を指し示す。これは、探す時間を減らし、若手が自分で辿り着ける導線をつくる仕事です。

大事なのは、AIが答えを創作するのではなく、人が残した根拠へ辿れることです。辿れない要約は、それらしく見えても現場では使えません。

だから、順番はこうなる

まず、失いたくない人と手順を決める。その人の手順と判断を、映像や図解や言葉で残す。残ったものを、後から探せるように整える。AIが関わるのは最後の一歩です。最初に道具を選ぶと、残す対象がぼやけます。

残す主役は、これからも人

知は、先人から届いて、次の人へ渡っていくものです。その流れの真ん中にいるのは、いつも人です。私たちがやるのは、その受け渡しを、辿れる形にしておくことです。AIは、その辿る道を短くする道具として使います。

この考え方を、自社に当てはめてみる。